｜公益財団法人神戸市民文化振興財団

January 19, 2015, 9:57 pm

谷崎潤一郎　没後50年・生誕130年
東京・日本橋で生まれ、東京大学在学中に鮮烈なデビューを果たした後、明治、大正、昭和の3つの時代を通じて積極的に作家活動を続けてきた谷崎潤一郎。関西での暮らしは『痴人の愛』など西欧的なスタイルから日本の伝統美への指向を強めさせ、『源氏物語』の現代語訳や『細雪』などの執筆活動へつながっていった。
芦屋市谷崎潤一郎記念館
谷崎潤一郎の業績を顕彰するため1988年に開館した文学館。今後2年間は「文豪は時空を超えて」を共通テーマとし、没後50年・生誕130年を記念した特別展、常設展、ロビー展など多彩な企画に取り組む。■住所：芦屋市伊勢町12-15■休館日：月曜（祝日の場合は翌日）■問い合わせ：芦屋市谷崎潤一郎記念館電話：0797-23-5852
●冬の通常展「谷崎潤一郎人と作品」、特設展示「震災と谷崎」期間：～3月22日（日曜日）谷崎の人生と作品にとって大きな転機となった関東大震災。首都復興について書いた随筆「東京をおもふ」直筆原稿などを展示し、震災が谷崎に与えた影響を探る。料金：一般300円、大学・高校生200円、65歳以上150円
●春の特別展「大谷崎展～没後50年・文豪は時空を超えて～」期間：3月28日（土曜日）～6月28日（日曜日）谷崎の生涯とその作品の全体像を紹介する一大回顧展。料金：一般400円、大学・高校生00円、65歳以上200円
《略歴》
明治19（1886）年：日本橋（現・東京都中央区日本橋）に生まれる　明治41（1908）年：東京帝国大学国文科入学　明治43（1910）年：和辻哲郎らと第二次「新思潮」創刊。『誕生』『象』『刺青』などを発表　明治44（1911）年：永井荷風に激賞され新進作家としての地位を確立する。短編集『刺青』を刊行
★豆知識～ノーベル賞候補　ノーベル賞の候補者は50年間にわたり非公開。近年開示された資料によると谷崎は1958年、60～64年の最低6回は候補になっていたことが分かっている。
大正4（1915）年：石川千代と結婚　大正12（1923）年：箱根で関東大震災に遭い、芦屋の友人宅へ避難する。その後一家を挙げて関西へ移住する　大正13（1924）年：『痴人の愛』を「大阪朝日新聞」に発表
★豆知識～佐藤春夫との三角関係　生涯に3人の妻を持った谷崎。最初の妻・千代を詩人・佐藤春夫に譲ったことが「細君譲渡事件」として世相をにぎわせるスキャンダルとなった。
昭和3（1928）年：武庫郡本山村岡本梅ヶ谷（現・東灘区岡本）に豪邸（鎖瀾閣）を築く　昭和5（1930）年：千代と離婚　昭和6（1931）年：古川丁未子と結婚　昭和10（1935）年：丁未子と離婚　森田松子と結婚　昭和11（1936）年：武庫郡住吉村反高林「倚松庵」（現・東灘区住吉東町）に転居　昭和14（1939）年：『潤一郎訳源氏物語』刊行　昭和17（1942）年：『細雪』の執筆を始める
昭和19（1944）年：熱海市に疎開　昭和20（1945）年：津山市に疎開　昭和21（1946）年～23（1948）年：『細雪』上・中・下巻刊行　昭和40（1965）年：神奈川県湯河原町の自宅で逝去
★豆知識～松子に宛てたラブレター「一生あなた様にお仕へ申すことが出来ましたらたとひそのために身を亡ぼしてもそれか私には無上の幸福でございます」といった手紙を多く残している。⇒自筆の書簡は記念館、倚松庵で！
★豆知識～祖父譲りの処世術　当時の作家には珍しく交渉術に長けていた谷崎。倚松庵を転居する際、もらわないと約束していた書斎建築費用3,000円を大家に支払わせたという。⇒詳しい顛末は倚松庵で！
倚松庵（いしょうあん）■住所：神戸市東灘区住吉東町1-6-50　■開館日：原則土・日曜のみ10時～16時　■入館料：無料　■問い合わせ：倚松庵　電話：078-842-0730
短い期間で転居を繰り返した谷崎が7年間暮らした家。『細雪』では主人公一家の住居として、間取りや意匠はそのままに1.5倍の大きさで描かれた。神戸市の都市計画で平成2年に元の位置から150m北へ移築した際、免震構造にしたため、阪神・淡路大震災のときは瓦が1枚落ちただけだったという。原則第二土曜日に、谷崎潤一郎の研究家であるたつみ氏による案内があり、作品の世界や作家のさまざまなエピソードを聞かせてもらえる。

この機会に読みたい『細雪』　大阪船場の旧家蒔岡家の4人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす風俗絵巻。戦争中であったため、その絢爛、豪華な世界観が当局の追及を受け、連載は中止となる。しかし、作品は書き続けられ、戦後には毎日出版文化賞や朝日文化賞を受賞するなど高く評価される。登場人物たちが三宮、元町、神戸港を訪れる描写は興味深い。中公文庫、新潮文庫などで読むことができる。